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【ユマニチュード】人間らしさと優しさに基づいた認知症ケア

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 昨年、コロナ感染防止で外出をやめた母が認知症を発症し、施設に入りました。 この23分の動画を見ていて涙が出てきました。

 見舞いに行ったら「見る・話す・触れる・立つ」の4つのケア技法で、母の人間らしさを取り戻してあげています。

ユマニチュードとは? *1

背景 

  •  高齢化とともに増え続ける認知症患者、日本では65歳以上の4人に1人が認知症になる可能性があると言われている
  • そのケアの困難さから、医療、介護の現場が疲弊し、離職者が増えている
  • そんな中、フランスで考案された「ユマニチュード」と呼ばれる手法が注目されている

ユマニチュードとは? 

  •  「人間らしさを取り戻す」ことを意味するフランス語で、フランス発祥の認知症のケア技法のことです
  • 認知症の患者の尊厳を保ち、人間らしさを尊重するケアです

ユマニチュードの4つの基本 *2

  • フランスで35年前から認知症患者に用いられ、150もの状況に応じた技術がありますが、その柱は、この4つです

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認知症ケアー技法「ユマニチュード」の4つの基本 *2

 

 

 【出典】

 


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ユマニチュードの方法

  見る・話す・触れるという、このわずか1分程度の行為で、8割~9割の患者の問題行動が改善するという方法を、要約してまとめました。

 イヴ・ジネストさんが行った「ユマニチュード」という手法は、細かなテクニックが150あるそうです。 それを驚くぐらい短時間で、認知症患者を改善された方法の一端です。

鍵は?

  • 介助者が最初にすべきことは、あらゆる手段を使って「あなたは人間である」ことを感じさせること

見る

  • 患者さんが、ジネストさんに視線を合わせるように何度も促している
  • 認知症の人は、相手から見られないと「自分は存在しない」と感じ、自分の殻に閉じこもってしまいます
  • 遠い位置から視野に入り、接近し、患者さんに、人が近づいてくることを手を振るなどで感じさせ、急に顔を出すような不安を防ぎます
  • 目線は正面から水平の高さで、お互いが平等であることを伝えます
  • 距離は近く、時間はできるだけ長く見つめます

話す

  • 優しさを込め「会えてとてもうれしいです」「ホントに幸せです」など、前向き、友好的な言葉をかけます
  • 大げさとも思えるぐらいの笑顔を作ります。表情を確実に伝えるためです

触れる

  • 握手し、相手の反応を見ながら、優しく体に触れます
  • 腕、肩、そして背中などをなでることで、安心感を与えます

立つ

  • 人間の尊厳は、自分で歩けること
  • もちろん、患者さんの状況によりますが、可能な限り寝たきりにならないよう、ジネスト先生は歩かせることで喜ばせておられました

 

【注】コロナ感染対策としては、現在は困難な方法です。このブログの後半に、フランスで取られている、コロナ対策環境での面会の仕方についても、情報を入れています。

*1 で紹介された事例

   イヴ・ジネストさんが「ユマニチュード」を使い、驚くぐらい短時間で、認知症患者を改善できた事例

わずか10分で歩き始めた 小野寺忠夫さん 76歳

  • 元大工の棟梁だったが、脳疾患で右半身にマヒがある
  • 最近では認知症の症状も見られ、介護士に対しどなったり、時には手を上げることもある
  • そんな小野寺さんに、わずか10分で、車いすから立たせ歩き始めた
  • 「ちょっと笑ってみてください」とジネストさんが言うと「にっこり」
  • 小野寺さんの変化に、介護士の女性の一人は、涙を流していました

足利赤十字病院に骨折で入院中の、近藤政時さん 94歳

  • 寝たきりの近藤さんの、口のケアーを3人の看護師が「丁寧に」行ったが、最後まで口を開かない
  • 看護師は「一生懸命やっているのに、ばかやろーとか殴られたり」どうしたらいいか悩んでいた
  • ジネストさんからの指摘は、(1) 患者の部屋に入るときはノックして、遠くから近藤さんの視線をとらえて近づく (2) 腕をつかむと恐怖心を抱き敵から自分を守ろうと抵抗する (3) 拘束帯などで縛るのは、症状を悪化する危険行為
  • ジネストさんが、ユマニチュードのインストラクター女性と一緒に、近藤さんの病院に訪問し、わずか数分で、口を開いてケアーを受け入れ「にっこりとお礼を言う」まで改善。 しかもその後ずーっと寝たきりだったが自分で立って歩けるように改善した

老人ホームに入所している認知症の女性

  • 「私はどうしたらいいの?」といらだった表情で、机をたたくなどの行為を繰り返している
  • ジネストさん「女性は常に孤独感に襲われている」「施設の他の人は知らない人」
  • 過去の記憶が欠落し、新しい記憶を重ねることが困難な認知症の人たちには、知性で相手が優しい人かどうかを判断することが難しい。
  • ユマニチュードはやさしさで、「感情に訴える」

 

 

コロナ禍での、ユマニチュードは? *3

   新型コロナ感染防止で、「会う」「触れる」ことが難しい今、ジネスト先生からの「コロナ禍」でのユマニチュードガイドが出ています。

コロナ感染防止を意識した、ユマニチュード 

  • 訪問者(家族や親しい友人)は、施設に到着し、面会時間の制限を含め、尊重すべきルールが書かれた行動憲章を読み、署名する
  • 特定の場所を用意し、面会のための場所に透明なガラスやフィルムを使って直接の接触を避ける
  • 実際に接触する場合は手袋を着用し、部屋を訪問する際には使い捨てのガウンを着用する

フランスでの試みの例 

 *3 にフランスでの写真がありますので、出典のリンクをご覧ください

  • 訪問する家族はマスクと手指消毒を徹底します
  • 面会のためのテントが庭に設営されました
  • 常に換気を行います
  • 対人距離を十分にとります
  • マスクをしていても、笑顔を伝えることができる、口の部分が透明なマスク ユマニチュードインストラクターの発案です
  • 窓を通して外部とつながります
  • テレビ会議のようなITを使ったコミュニケーションの試み
  • 家族の訪問は十分な距離を保ちます
  • もしくは、窓越しに
  • 食事も距離をとります
  • ガラスの移動式ついたて越しの面会

【出典】

  • *3 日本ユマニチュード学会 2020.05.02 私たちが立ち向かうべき2つの敵:COVID-19とせん妄
    イヴ・ジネスト先生からの特別寄稿 
    https://jhuma.org/20200502/

 

 

まとめ

 ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。 

認知症の方に行うケアのカギ

  • あらゆる手段を使って「あなたは人間である」ことを感じさせること

見る

  • 遠い位置から視野に入り、接近し、患者さんが「人が近づいてくることの存在感を手を振るなどで」感じさせ、横から急に顔を出すと相手が不安を感じることを防ぎます
  • 目線は正面から水平の高さで、お互いが平等であることを伝える
  • 距離は近く、時間はできるだけ長く見つめます

話す

  • 優しさを込め、できるだけ前向き・友好的な言葉をかける
  • 大げさとも思えるぐらいの笑顔を作ります

触れる

  • 握手し、相手の反応を見ながら、優しく体に触れます
  • 腕、肩、そして背中などをなでることで、安心感を与えます

立つ

  • 人間の尊厳は、自分で歩けることです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

備考 *1動画の内容詳細

日本では4人に1人が認知症になる可能性があると言われている
介護の難しさから、家族だけでなく、施設で働くプロでさえ意思疎通ができず、認知症患者がさらに孤立するケースが目立ってきている
患者とどう向き合えばいいのか
フランスで考案された、介護の手法「ユマニチュード Humanitude」が注目を集めています

【事例1】  

2010年撮影、足立昭一さん 50代で認知症を発症した

昭一さん 「だんだん自分が分からなくなって、昭一は誰なんだろうと考えました」
東京のNPOが開設した、認知症の語りデータベースという動画サイト NPO ディペックス・ジャパン DIPEx Japan

認知症の理解を促すために、本人や家族の証言が集められている
認知症の語りデータベース 2013年7月開設 視聴数80万回超え (2021.9.2時点)

このインタビューの時は、自分の言葉で認知症のことを語っていた
それから4年、2014年1月(大分市)病状は緩やかに進行していた。
妻・由美子さんとは短い単語で会話ができるが、だんだんと会話は繋がらなくなり、他者とのコミュニケーションは難しくなっていた。
当初は夫の変化に戸惑い、苦しんだ由美子さんだったが、家族の会などに参加することで、少しずつ病気を理解できるようになったという
かつて夫が語っていた言葉が今では励みになっているという
「4年前はこんな風に考えていたのかと、教えられることもあるので」
過去のことを残してくれたのは、私が今、夫と心をつなぐ材料にもなっている」
認知症を発症したこと、昭一さんはいつも妻に「病気のことをきちんと理解してくれることで、認知症の人が不安にならない」
由美子さんにとって4年前の昭一さんが語る映像は、昭一さんの考えを知るうえで励みになっているという。
認知症を発祥した頃、よく語っていた言葉がある。
「病気をきちんと理解してくれる事で認知症の人が不安にならない」と。
病気への理解は家族だけでなく介護する側にも必要だ。

【事例2】

フランスの病院に入院する認知症の男性患者の体を看護師が拭こうとする映像。
男性は看護師に抵抗を示すが、看護師は強引に男性を洗面台まで連れて行き、男性は大声で抵抗する。
これは海外特有のものではなく、国内でもありふれた光景だ。

【事例3】

第2回 H25年度 病院職員のための認知症研修会
全日本病院協会 認知症研修会 2014年1月11日~12日
日本の65歳以上の4人に1ひとり が認知症になる可能性があると言われている

認知症に対するケアーのあり方が問題視されている中、フランスで生まれた、新たな介助の仕方が注目されている
2021年、その考案者イヴ・ジネストさんがフランスから来日し、各地で公演や研修を行った。
イヴ・ジネストさんが考案した手法の名称は「ユマニチュード Humanitude」人間らしく接するとの意。

「人は他の人から人間であると認識してもらえないと、生きていけません」

ユマニチュードは、フランスでは35年前から認知症患者に用いられ、様々な状況に応じた150もの技術があり、フランス国内では広く普及しているという

「人間らしく接する」

魔法のケアとも言われるユマニチュード、ジネストさんがその秘密を明かす

【事例4】

横浜市 特別養護老人ホーム 緑の郷(さと)
ジネストさんが訪れました
ユマニチュードがどういうものなのか、見せてもらいました

認知症の男性にジネストさんが近づきます
大げさに手を広げ近づく  
「大工の棟梁さんだったんですね」「すごい仕事です」
喜んでうなずく

「私をよく見てください」  水平の視線
小野寺忠夫さん 76歳 脳疾患を患い、右半身にマヒがある
最近では認知症の症状も見られ、介護士に対しどなったり、時には手を上げることもあると言います

ジネストさんは小野寺さんと短い会話を交わした後、
車椅子から立たせ、歩かせる練習を始めました
今までほとんど立つこともなかったと言う小野寺さんが
支えられながらも、少しづつ歩き出しました

「ちょっと笑ってみてください」
微笑んで、抱きしめられる 拍手
小野寺さんの変化に、介護士の女性の一人は、涙を流していました
今までスタッフを困らせていたとは信じられないほど、小野寺さんは終始柔和な表情で、
ケアーを受け入れていました

この間わずか10数分
あまりにも短い時間に、アナウンサーはただただ驚ろくばかりでした

【事例5】

一連のケアーのどこに、ユマニチュードの技術が隠されていたのでしょうか?

「ユマニチュードは認知症の人との人間関係絆をつくるテクニック」
「私はあなたの友人ですよ、仲間ですよ」と認知症の人に感じてもらうには、
見る
話す
触れる
三つの行動で伝える、 ことが大切なのです」

ユマニチュードは、優しさを伝える技術と言われています。その基本となるのが、

■ 見る: 小野寺さんに視線を合わせるように何度も促している : これがテクニック
  認知症の人は、相手から見られないと「自分は存在しない」と感じ、自分の殻に閉じこもってしまいます」
 介助者が最初にすべきことは、あらゆる手段を使って「あなたは人間である」ことを感じさせる
 ユマニチュードには細かなテクニックがあります
 遠い位置から視野に入り、接近する  → 人が近づいてくることの存在感を強く感じた
   手を振るなど
   横から急に顔を出すと相手が不安を感じるためです
   目線は正面から水平の高さで、お互いが平等であることを伝える
   距離は近く、時間はできるだけ長く見つめます
■ 話す。
   優しさを込め、できるだけ前向き・友好的な言葉をかける
       「会えてとてもうれしいです」「ホントに幸せです」
   大げさとも思えるぐらいの笑顔を作ります : 表情を確実に伝えるためです

■ 触れる
   握手し、相手の反応を見ながら、優しく体に触れます  
   腕、肩、そして背中など  → 安心感を与える

見る・話す・触れるという、このわずか1分程度の行為で、8割~9割の患者の問題行動が改善するという
【事例6】
ユマニチュードの根底には、認知症に対する深い理解がある。

老人ホームに入所している認知症の女性
「どうしたらいいの」といらだった表情で、机をたたくなどの行為を繰り返している

ジネストさん「女性は常に孤独感に襲われている」
施設の他の患者は、知らない人なのだ

過去の記憶が欠落し、新しい記憶を重ねることも困難になる、
そういう認知症の人たちに、ユマニチュードは、
感情に働きかけるのだと言う

認知症の人の場合、相手が優しい人かどうかを知性で判断することが難しい、
しかし、感情の機能は最後まで働いている」
だから、ユマニチュードでは、優しさを「感情」に訴える

【事例7】

栃木県足利市  足利赤十字病院
認知症の問題で、深刻な問題を抱えているのが病院だ
認知症の人が病気やけがで入院した場合、突然環境が変わるため、症状が急激に進行してしまう

患者の 近藤政時さん 94歳
足を骨折してこの病院で手術を受けた
近藤さんは会社を定年退職してから、長年老人クラブの会長を務め、山登りするなど足腰は90歳を超えても丈夫だった
しかし、3年前に妻を亡くしてから、認知症を発症
家じゅうのものを壊すなど、感情のコントロールが効かなくなってきているという

3人の看護師が、近藤さんの口の中のケアーを行う
お口を開けてください と言っても空けようとしない 最後まで口を開けなかった
拘束帯を使って、手足を縛る
本来体を清潔に保つ、心地よいケアーのはずが、患者も看護師も互いにストレスしか残らない時間になっていた

看護師「一生懸命やっているのに、ばかやろうとか、殴られたりとか、されると、どうしたらいいのか悩む」
今医療現場で問題になっているのは、認知症患者を担当する看護師の離職率の高さ、
そのつらさに、職場を去ってしまうのだ

ジネストさんに、近藤さんのケアーの状況を見てもらった


まず、患者の見ている方向から入っていないので、看護師が来たことが分かりずらい
視線も、患者を見下ろしていて、距離が遠く、しかもマスクをしているので笑っていてもわかりません

看護師たちは献身的ですが、人間関係が作られていないので、患者は心を閉ざして、口を開かないのです

さらに、ジネストさんが問題視したのは、看護師が腕をつかんでいることだ
つかむことは「愛していない」と言っているのと同じ

認知症の患者は、腕をつかまれると恐怖心を抱く
つかむ人 = 敵  と認識し、自分を守ろうと抵抗するのだ

こういったケアーの仕方は、世界中で見られるが、全く意味をなしません
ーーーーーーーーーー
ジネストさんが、近藤さんの入院する病院にやってきた
近藤さんにユマニチュードを行うのだ
「周りが敵だらけと言う患者がいます」
「周りが意地悪と言うのではなく、彼らがそう受け取ってしまう」

ユマニチュードを習得したインストラクターが病室に入る
必ずノックする  たとえ返事が無くても
相手のテリトリーに入ると言う合図なのだ
近藤さんは人が来ると言うことに気づいた
インストラクター: 近藤さんの視線を素早くとらえ、見つめて、話して、そして、触れる
   素敵な先生ですよー とジネストさんを紹介
ジネスト: So Happy to see you 握手しながら目線を合わせて、「すごく感じの良い方ですね」
患者: よろしく!
ジネスト: 背中をなぜながら、マッサージをします
  ユマニチュードは、原則として拘束しない。 拘束は症状を悪化させる危険な行為だとしている
  動くことは、生きることであり、それを制限することは、生きることを否定するという考え方がベースにある
ジネスト: 左足を上げてください
患者: 足を少し上げる
ジネスト:  すごーーいと拍手
   今度は右足です
患者: 右足を上げる
ジネスト: 両手を上げてばんざーい と賞賛 「すばらしい」
   今度は、ベッドに腰かけさせ、起き上がる、
インストラクター: 笑顔で顔を見つめる
ジネスト: 左足を触って、足にスリッパをはかせて、立ち上がらせる
ユマニチュードでは、立つことも重要視している
筋力を衰えさせないだけでなく、立つことで他の人と同じ空間にいることを認識させる
それが、人間の尊厳を保つことにつながるのだ
インストラクターとジネストさんが、両手を持って、歩かせている
入院してから寝たきりだった近藤さんが、立って歩きだした
近藤さんの息子の達郎さん:  薬剤部
近藤さん: 私のせがれ、と皆に紹介
ジネスト: 息子さん、かっこいいですね!それに立派ですよ

インストラクターが、口の中のケアを行う
インストラクター: 口を大きく開けてください とジェスチャーで自分も大きく開ける
近藤さん: あける  あれほど嫌がっていた近藤さんが、すんなりと口を開けた
  目を開けてーー 私を見てーーー
インストラクター: さっぱりしましたか?
近藤さん: はい! さっぱりいたしましたと、自らインストラクターと握手
近藤さんの息子の達郎さん: 何年かぶりに、笑顔を見させていただいた。感激している
 昨日まで寝たきりだったのが、本当に別人のようになった気がして、ありがたいです

ジネストさんが、この場を離れても、
近藤さん: 息子を紹介、「どうもありがとうございました」とお礼を言って、ひとりで車椅子から立ち上がった
  もっと歩きたいと、近藤さんは、ベッドに行かずそのまま廊下に散歩に出る

ユマニチュードが、近藤さんの心の扉を開き、本来持っている力をよみがえらせた